私自身が施術のポイントとして考えているのは自律神経の調整です。
神経には、自律神経と体制神経の2種類がある
体制神経には、運動神経と感覚神経があります。
体制運動神経は、基本的に私たちの意思によって動かすことの出来る筋肉(随意筋)に脳からの指示を伝えるもので、
体性感覚神経は視覚や嗅覚などの五感(触覚には痛覚、温度感覚、位置感覚や振動覚などの深部感覚を含む)を脳に伝えるものです。
自律神経には、交感神経と副交感神経の2つがある
自律神経は、心臓や胃腸などの内臓や血管、汗腺や涙腺などの分泌腺、瞳孔など、(基本的には)自分の意思とは別に働く部分をコントロールするのが仕事です。
自律神経には、戦うとき(活動時)に活躍する交感神経と、眠っているときやリラックスしているときに優位になる副交感神経の二つの働きがあります。
前者の交感神経は、心臓の拍出量や呼吸量を増やし、脳を活性化させ、心も身体も緊張させて、戦いに適した身体の準備を整えます。
後者の副交感神経には、消化器系の働きを活発にして身体にエネルギーを蓄積したり、気道を少しだけ閉じて呼吸量を下げたり(これが急激に起こるのが喘息です)、心臓の収縮などもゆっくりにして身体を休ませ、心身の回復を促す働きがあります。
この相反する機能を持つ2つの神経が、状況に合わせ切り替わってゆくことで、繊細かつ的確な体内環境の調整が可能になるのです。自律神経はホルモンの働きと連動して、私たちが生きていくのに適した体内環境を作り出す
外に置いてある水は、気温が10度下がれば水温も同じように下がります。でも、身体の60%を水分が占める私たちの体温は、外気温に関わらず、常にほぼ一定に保たれています。
それは、身体にある温度センサーが外気温の変化を察知し、血管や毛穴の開き具合を変えることで体表面からの熱の放出を調整、体内で発生する熱量を増やすなど、低体温にならないよう身体の中を瞬時に変化させているわけです。すごいですよね。
季節の変わり目に体調を崩し易い人は、自律神経の調節が苦手な人
気候の変化があると、自律神経はそれに合わせて体内環境を調整しなければな りませんが、気候変動が激しい時期、特に春は調整が難しく、自律神経の調整力が弱い人は体調が整いません。
そんな人は、一見厳しい環境の真冬や真夏の方が、気候が安定しているため、かえって体調は良くなります。
一方、自律神経の働きがまだ完成されていない乳幼児や、機能が落ちているお年寄り、脊髄損傷などで脳からの指令が身体に伝わりにくい人などは体温調節が難しく、低体温や熱中症になりやすいので注意が必要です。
自律神経は、環境変化や日内リズム、感情などにより変動する
この二つの神経の切り替えは、精神的な緊張や身体的な活動状況、日内リズムに合った身体の活動や明るさなどにより影響を受けるため、現代人のように、夜遅くまで仕事をしたり、深夜までテレビやパソコンなど照度の高いものを見つめていたりすると、本来なら、副交感神経が活躍すべき時間帯まで、戦う神経である交感神経が活躍し続けてしまい、身体が回復する暇がありません。
ですから、私の考える現代人の疲労の最大の原因は、疲れることが問題なのではなく、回復出来ないことの方です。
心身のストレスや不規則な生活が自律神経を狂わせる
不規則な生活や緊張続きの毎日は、自律神経のバランスを乱し、私たちが本来持つ免疫力や回復力を弱めることで、疲れやすい、何となく元気がない、身体が重い、やる気が起きない、などの身体症状を引き起こしています。
マッサージや鍼灸は、主に副交感神経の活動を高める
私は主にマッサージで(場合によってはリラックスを促す浅い鍼を追加して)交感神経の緊張を取り、副交感神経の働きを活性化させています。
自律神経の反応は早く、副交感神経が元気になった証拠は施術中即座に現れます。
患者さんのお腹が大きな音をたたて鳴ると、私は「良いお返事ですね」となるのですが、お腹は減っていないのにお腹が鳴り、腸に心臓が出来たみたいにお腹がどくどくいい、うつ伏せから仰向けに変わると、普段ならベッドから浮いた感じになる腰や首の後ろがベッドに密着し、身体の力を抜くとはどんな感じかを知ることが出来ます。(ヨガの屍のポーズをしたときの感覚でしょうか)
表面的に筋肉や骨格を調整するだけでは、その時一瞬楽になってもすぐに元の状態に逆戻りして良い状態は長続きしませんが、筋肉のこりを取り疲労物質を流してやると同時に、自律神経を調節して特に副交感神経の働きを促すことで、身体は本来の回復力を取り戻し、自力で疲労から回復出来るようになるのです。
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